入社後ギャップとは?原因・4種類の分類・企業と求職者の対策

入社後ギャップとは?原因・4種類の分類・企業と求職者の対策
入社後ギャップは経験率9割前後・企業の早期離職発生率6割前後という広がりを持つ課題です。4種類の分類、構造的な原因、企業側と求職者側の対策、業種別傾向、失敗パターン、効果測定の設計まで実務視点で整理します。

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入社後半年で辞められる。面接では意気投合したのに、いざ配属すると「聞いていた話と違う」と言われる。こうした状況は、採用の失敗というより、入社前に交換された情報の質に原因があります。

入社後ギャップとは、求職者が入社前に抱いていた期待と、入社してから直面する現実との間に生じる食い違いを指します。エン・ジャパンの調査では、入社後にギャップを感じた経験がある人は87%にのぼり、企業側の調査でも直近3年で入社半年以内の早期離職があった企業は57%に達しています。

この記事では、入社後ギャップの実態データと4種類の分類、構造的な原因、企業側と求職者側それぞれの対策、業種別に起きやすい傾向、対策が機能しない失敗パターン、効果測定の設計までを、一次データを引用しながら実務視点で整理します。

入社後ギャップの実態|87%が経験する理由

入社後ギャップは、一部の企業や求職者に起きる特殊な問題ではありません。国内の複数調査で、経験率が9割前後、企業側の早期離職発生率が6割前後という数字が繰り返し確認されています。

入社後ギャップとは何か

入社後ギャップとは、求職者が入社前に想定していた仕事内容・職場の雰囲気・人間関係・給与・キャリアなどが、入社後の実態と異なっていたと感じる状態を指します。「入社前ギャップ」「入社前後のギャップ」「リアリティショック」といった呼び方もありますが、いずれも同じ現象を指しています。

ギャップには「良かった」ケースと「悪かった」ケースの両方があります。良い方向のギャップは定着や満足度を上げる方向に作用しますが、悪い方向のギャップが積み重なると、モチベーション低下・早期離職・退職連鎖に直結します。

87%が経験している:AMBI調査が示す実態

入社後ギャップの広がりを示すデータとして、業界で広く引用されているのがエン・ジャパンの若手向け転職サービス「AMBI」による調査です。39歳以下のユーザー929名を対象にしたアンケート(2024年5〜6月実施)では、入社後にギャップを感じた経験があると回答した人は87%にのぼりました(エン株式会社「AMBIユーザーアンケート 入社後ギャップ調査」)。

ギャップの上位項目は、悪い方向・良い方向の両方で「仕事内容」と「職場の雰囲気」が並びます。悪かったギャップの1位は「仕事内容」(39%)、2位は「職場の雰囲気」(38%)でした。転職を考えるトリガーになったギャップも、「職場の雰囲気」と「仕事内容」が同率34%で1位に並びます。

企業側のデータも同じ方向を示しています。エン・ジャパンが人事担当者向けサイト「人事のミカタ」で実施した「早期離職」実態調査(2025年5月発表、n=291社)では、直近3年で入社半年以内の早期離職があった企業は57%。特に従業員1,000名以上の規模では7割以上が該当していました。早期離職の要因1位は「仕事内容のミスマッチ」で57%、2位は「人間関係の問題」で35%でした(エン株式会社「早期離職実態調査(2025)」)。

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」でも、大卒の就職後3年以内の離職率は33.8%(令和4年3月卒)と、3人に1人が3年以内に離職する構造が続いています(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」)。

入社後ギャップは一部企業の個別問題ではなく、日本の労働市場全体に広がる構造的な課題です。詳細な離職視点の分析は「早期離職の原因と対策」で扱っています。

入社後に起きる4種類のギャップ

入社後ギャップは、業界で整理されている分類として大きく4種類に分けられます。自社で起きているギャップがどのタイプに該当するかを見極めることが、対策設計の出発点になります。

仕事内容のギャップ

もっとも発生頻度が高いのが、仕事内容に関するギャップです。想定していた業務範囲と実際の業務範囲が違う、配属先が希望と違う、仕事の進め方が思っていたスタイルと異なるといった食い違いが該当します。

マンパワーグループの「入社前後のギャップ調査」では、「採用面接時や入社前にもっと詳しく聞いておけばよかったこと」の1位が「仕事内容」で45%を占めました(マンパワーグループ「入社前後のギャップ調査」)。中途採用の場合、業務内容そのものよりも「仕事の進め方」の違いがギャップにつながるケースが多く、営業職や開発職などのメジャーな職種でも各社の業務プロセスは大きく異なります。

前述のAMBI調査でも、悪かったギャップの1位(39%)と、転職を考えるトリガーの同率1位(34%)に「仕事内容」が入っています。

人間関係のギャップ

上司や同僚との関係、チームの距離感、コミュニケーションスタイルに関するギャップです。人事のミカタ2025では、早期離職の要因2位が「人間関係の問題」(35%)でした。

エン・ジャパンの「本当の退職理由」調査(2024年)では、退職経験者の54%が「会社に伝えなかった退職理由がある」と回答しました。会社に伝えた退職理由の1位は「別の職種にチャレンジしたい」でしたが、伝えなかった本当の退職理由の1位は「人間関係が悪い」(46%)、2位は「給与が低い」(34%)でした(エン・ジャパン「本当の退職理由」調査(2024))。人間関係の問題は表面化しにくく、企業側が把握しにくい構造があります。

評価・待遇のギャップ

給与・賞与・昇進スピード・評価制度に関するギャップです。「聞いていた年収と初年度の実支給が違う」「評価基準が曖昧で昇進の見通しが立たない」「同期入社との待遇差が説明されない」といったケースが該当します。

給与そのもののズレは面接時に確認しやすい情報ですが、賞与額・残業代の実支給・昇進スピードは入社してみないとわからない情報が多く、ギャップの温床になりやすい領域です。

組織文化のギャップ

企業文化・意思決定スタイル・働き方の暗黙のルールに関するギャップです。「フラットな組織と聞いていたが実際はトップダウン」「風通しが良いと言われたが会議で発言する空気がない」「リモート推奨と聞いていたが実際は出社が多い」といった状況が該当します。

組織文化は、求人票の1文で伝えるには抽象度が高すぎる情報です。「アットホームな職場です」「風通しが良い」といった定型表現からは、実態は読み取れません。求職者が判断できる粒度に落とすには、社員の日常の場面・具体的なエピソード・映像などで補完する必要があります。

入社後ギャップが起きる構造的な原因

入社後ギャップは、企業が意図して情報を隠しているから起きるのではなく、「採用プロセスで交換できる情報の種類にもともと限界がある」ことから起きます。原因を3つの構造に分解して整理します。

求人票と面接で伝えられる情報の限界

求人票は、給与・勤務時間・仕事内容の概要といった条件情報を効率よく伝えるフォーマットです。この形式に載せにくい情報が、入社後ギャップの上位を占めます。

仕事のテンポ、繁忙期のチームの動き方、朝礼の空気、休憩時間の使われ方、先輩と後輩の距離感といった情報は、テキストではどうしても抽象化されます。「アットホームな職場です」の1文からは、その職場の実態は読み取れません。

面接も同じ構造的な限界を抱えます。企業は良い面を伝えようとし、求職者は好印象を与えようとします。30分から1時間の対話で交換できる情報は「言葉で説明できる範囲」に限定されます。繁忙期の緊張感や、日常の何気ない会話のトーンといった情報は、面接では見えません。

採用担当者と現場のすり合わせ不足

採用担当者が現場の実態を把握しきれていないケースも、ギャップの温床になります。人事部門が求人票を書き、面接で会社の説明をしても、その情報が配属先の現場の日常と一致していないと、入社後にギャップが表面化します。

「うちはチームワークが強い会社です」と人事が伝えても、配属先の部署でメンバーが個別にサイロ化して働いていれば、入社した人は「聞いていた話と違う」と感じます。人事の情報と現場の実態にズレがあるまま採用が進むと、ギャップは避けられません。

退職理由が本音で出てこない構造

入社後ギャップが解消されない大きな要因の一つが、退職理由が本音で出てこない構造です。前述の「本当の退職理由」調査では54%が本当の理由を会社に伝えていません。Uniposの調査でも、企業風土・カルチャーに関する認識のズレを感じた社員は6割以上にのぼると報告されています(Unipos「就職と企業風土・カルチャーに関する実態調査」2024年、n=550)。

退職面談では建前の理由しか出てこないため、企業は原因を掴めず、同じミスマッチを繰り返します。結果として、入社後ギャップの構造が可視化されず、対策も打てないまま採用が続きます。課題の全体像は「採用ミスマッチが起きる原因の全体像」でも整理しています。

入社後ギャップが招く3つの経営インパクト

入社後ギャップは、個人のモチベーション低下にとどまらず、経営指標にも影響します。代表的な3つのインパクトを整理します。

早期離職と再採用コストの発生

もっとも直接的な影響が、早期離職による再採用コストです。1名の中途採用にかかる平均採用コストは、業界データでは新卒で90〜100万円前後、中途で100万円前後とされます。早期離職が発生すると、この採用コストがそのまま再度発生するだけでなく、教育コスト・機会損失も加わります。

前述の人事のミカタ2025では、早期離職経験企業は57%、従業員1,000名以上では7割以上が該当します。1名の早期離職で発生する損失は、採用費だけでなく育成中の人件費、既存社員の指導工数、業務停滞の機会損失を合算すると数百万円規模になるケースも珍しくありません。

現場の育成コストと離職連鎖

早期離職は、離職者本人のコストだけで終わりません。育成に時間をかけた先輩社員・OJT担当者のモチベーション低下、後任採用までの業務負担、チームメンバー1人あたりの残業増加といった影響が連鎖します。

「せっかく育てたのに辞められた」という体験が繰り返されると、既存社員自身の定着意欲も下がる方向に作用します。育成する側の疲弊が、次の離職の予兆になる構造です。

SNS・口コミ経由のブランドリスク

近年は、退職者や在籍社員の口コミが転職口コミサイト・SNSで拡散する時代になっています。「聞いていた話と違った」「入社後にギャップを感じた」という発信は、次の採用活動における応募母集団の形成に直接影響します。

エン・ジャパンの調査では、転職活動時に口コミを閲覧する求職者は7割を超えています(エン・ジャパン「転職活動時のクチコミ閲覧」実態調査)。求人媒体で募集を出しても、口コミサイトで低評価が並んでいると応募段階で離脱される。入社後ギャップは、次の採用の応募数にまで影響する経営課題です。

入社後ギャップとリアリティショックの関係

入社後ギャップと近い概念に「リアリティショック」があります。リアリティショックは1974年に看護学の研究者クレイマー(Marlene Kramer)が提唱した概念で、新人が理想として抱いていた仕事と現実とのギャップに直面したときに生じるショック状態を指します。

日本では、新入社員の適応課題を語る文脈で広く使われるようになりました。マイナビキャリアリサーチLabのコラムでは、リアリティショックが起きやすい4つのギャップとして「仕事内容」「対人関係」「他者能力」「評価」を挙げています(マイナビキャリアリサーチLab「リアリティショックとは?」)。本記事で扱ってきた入社後ギャップの4分類とほぼ重なる整理です。

両者の違いは、入社後ギャップが「客観的な期待と実態のズレ」を指すのに対し、リアリティショックは「そのズレによって新入社員本人が受ける心理的インパクト」を指す点にあります。企業側の対策としては、入社前の情報開示(RJP的なアプローチ)と、入社後のフォロー(オンボーディング・1on1・メンター制度)の両輪でショックを緩和する設計が業界標準になっています。

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企業側の対策:情報の質を上げる5つの実装

入社後ギャップを減らすための企業側の対策は、業界で広く実践されている5つの実装手段に整理できます。それぞれ目的・実装難易度・想定効果が異なるため、自社のギャップ主因に合わせて組み合わせを選ぶ設計が有効です。

求人票への「1日の流れ」記載

もっとも手軽に始められる対策が、求人票への1日の流れの記載です。「製造ラインの管理業務」という抽象的な記述の代わりに、「8:00 朝礼でチームの作業内容を確認 / 8:30 ラインで作業開始 / 12:00 社員食堂で昼食 / 17:00 片付けと翌日の段取り」といった時間帯別の記載に置き換えます。

繁忙期の残業実態、休憩時間の使われ方、朝礼の内容など、書ける情報を積み上げるだけで求人票の情報量は大きく変わります。実装コストがほぼゼロで、応募段階のセルフスクリーニングにも寄与するため、最初の一歩として推奨できる対策です。

カジュアル面談・オフィス見学

選考プロセスに入る前、または選考初期に、合否に関係しない対話の場を設ける手法です。カジュアル面談では、候補者から率直な質問が出やすくなります。「残業は本当にどれくらいですか」「人間関係で大変なことはありますか」といった、本選考の面接では聞きにくい質問が、カジュアルな場では自然に出てきます。

オフィス見学を組み合わせれば、職場の空気感や社員同士の距離感を体感してもらえます。実装コストは低めですが、対応する社員の時間が必要になるため、選考プロセス全体の設計とセットで検討する必要があります。

職場体験・体験入社

数時間から数日間、実際の業務を体験してもらう手法です。入社後ギャップ対策としては、情報密度がもっとも高くなる実装です。

エン・ジャパンの「体感転職プログラム」は、面接合格後に最大2日間の入社前職場体験を提供する仕組みで、営業職の場合は朝礼参加・会社説明・実際の新規開拓テレアポ・メンバーとのランチ・商談同行・振り返りセッションまでを1日で行います。同社によれば、導入前は中途入社メンバーの37%が1年以内に離職していたのに対し、体感転職プログラムを経て入社した人の退職率は0%になったと報告されています(エン・ジャパン「RJP理論の活用事例」)。

新卒採用ではインターンシップが同じ役割を果たします。実装工数は大きいですが、1人の早期離職で失うコストと比較すると費用対効果は高い施策です。

動画による現場開示

テキストや面接では伝えきれない情報を動画で補完する動きが広がっています。moovyの「採用動画トレンド調査2025」(20〜40代の求職経験者345名対象)では、求職者の約8割が採用動画を視聴していると報告されています(moovy「採用動画トレンド調査2025」)。求職者が求める動画コンテンツの上位は「1日の流れ」「職場の雰囲気」「入社理由」で、テキストで伝えにくい情報ほど動画で見たいという傾向が示されています。

動画が入社後ギャップ対策として有効なのは、「言葉で説明できない情報」を伝えられるからです。仕事のテンポ、社員の表情、現場の空気、繁忙期のチームの動き方といった、入社後ギャップの上位項目にあたる情報を映像で補完できます。

ただし、動画であればなんでも良いわけではありません。企業の良い面だけを切り取ったPR映像は、テキストの限界を映像に置き換えたにすぎません。1日の仕事を追いかける密着形式、社員同士の座談会、繁忙期の実際の現場など、「そこで働いたら自分はどうなるか」を判断できる素材が有効です。動画の全体像は「採用動画の効果とメリット」で、密着形式の具体的な作り方は「密着動画の作り方」、動画タイプの選び方は「採用動画の種類を事例で解説」で整理しています。ストークベースの制作事例として、榛木金属工業の採用YouTubeは、現場の1日を密着形式で継続発信している例です。

入社後オンボーディングと1on1

入社前の情報開示だけでなく、入社直後から数ヶ月の受け入れ設計もギャップ緩和に効きます。オンボーディング資料の整備、メンター制度、上司との定期的な1on1、3ヶ月・6ヶ月の面談は、ギャップが発生した際に早期にキャッチアップして解消するための仕組みです。

人事のミカタ2025では、早期離職を防ぐ3つの鍵として「Gap(期待と現実のズレ解消)」「Relation(上司との関係構築)」「Capacity(適切なスキル開発支援)」が挙げられています。入社前の情報開示(Gap)だけでなく、入社後の関係構築(Relation)と成長支援(Capacity)を組み合わせる設計が業界標準になっています。

求職者側でできる3つの入社後ギャップ対策

入社後ギャップは、企業側の情報開示だけで完全に解決するものではありません。求職者本人がとれる対策もあります。自社の採用ページに求職者向けの情報を掲載する際にも活かせる視点なので、企業側にも知っておく価値があります。

企業リサーチの質を上げる

求人票と会社案内サイトだけで判断せず、企業の一次情報に触れる機会を増やすことが第一の対策です。企業のオウンドメディア・採用ブログ・YouTubeチャンネル・SNSでの社員発信・プレスリリース・IR資料など、企業自身が発信している情報を横断的に確認します。

転職口コミサイトの情報も参考にはなりますが、退職者の声が中心になるため、ネガティブに偏りやすい点は注意が必要です。企業側の一次情報と口コミの両方を照らし合わせて判断する姿勢が現実的です。

カジュアル面談を積極的に活用する

企業側がカジュアル面談を用意している場合、選考の前にこの場を活用することでギャップは大きく減ります。合否がかからない場では、本選考では聞きにくい質問を率直にぶつけられます。

「繁忙期の残業時間はどれくらいですか」「配属予定部署の直近1年の離職率を教えてください」「人間関係で大変なことがあれば教えてください」といった質問を用意して臨むと、企業側の情報開示姿勢と実態の一致度を測る材料になります。

逆質問で「現場の日常」を引き出す

本選考の面接でも、逆質問の時間を使って「現場の日常」に踏み込む質問を投げることでギャップを減らせます。「配属予定部署の朝礼はどんな内容ですか」「先輩社員と後輩社員が普段どんな会話をしているか教えてください」「入社1年目の方が最初につまずいたことは何ですか」といった、日常の場面を引き出す問いが有効です。

抽象的な「御社の強みは何ですか」より、具体的な場面を引き出す問いのほうが、企業の実態が見えやすくなります。求職者にとって役立つ情報の設計は「会社の魅力の伝え方」でも整理しています。

業種別に見る入社後ギャップの発生傾向

入社後ギャップは、業種によって発生しやすい種類が異なります。自社の業種で発生しやすいギャップを事前に把握しておくと、対策の優先順位を決めやすくなります。

業種 発生しやすいギャップ 背景 相性の良い対策
製造・建設・物流・介護・ホテル等の現場産業 仕事内容
(体力・環境・繁忙期)
現場の空気や体力負荷が求人票・面接で伝わりにくい 職場体験
動画による現場開示
オフィス系(総務・企画・営業等) 人間関係
組織文化
仕事内容の抽象度が高く、日常のコミュニケーションが定着に影響 カジュアル面談
社員インタビュー動画
IT・エンジニア職 仕事の進め方
技術スタック
評価制度
開発プロセスや使用技術が各社で大きく異なる 技術面談
体験入社(ペアプロ等)
医療・福祉 人間関係
シフト実態
体力負荷
閉じたチームでの人間関係と夜勤・不規則勤務の負担 職場見学
シフト実態の開示

とくに現場産業では、職場の空気・体力的な負荷・繁忙期の緊張感といった情報がテキストでは伝わりにくく、入社後ギャップの発生率が高くなる傾向があります。動画による現場開示や職場体験のように「見て・体感して判断できる」対策との相性が良い領域です。

入社後ギャップ対策が機能しない4つの失敗パターン

対策を実施したつもりで期待した効果が出ないケースには、共通するパターンがあります。代表的な4つを整理します。

「良い面も含める」だけで悪い面を薄めているケース

もっとも多い失敗が、ネガティブ情報を出しているつもりで、抽象化して薄めてしまうケースです。「業務量が多い時期もあります」という表現は、事実を伝えているようで何も伝えていません。候補者は「多いってどれくらい?」と考えて、自分に都合の良い解釈をします。

開示する情報は「繁忙期の残業は月40時間、期間は年3ヶ月」といった具体的な数字と期間に落とし込む必要があります。

抽象的な言葉で「大変さ」を伝えているケース

「体力的にハードな仕事です」「精神的にタフさが求められます」といった抽象的な表現も、ギャップ対策としては機能しません。求職者にとって「体力的にハード」の意味は、自分の物差しでしか判断できないためです。

「1日の立ち仕事の時間は7時間程度」「20kg前後の荷物を扱う場面が1日に10回程度ある」といった具体的な作業内容と数量を示すことで、初めて候補者は自分の身体で判断できるようになります。

情報開示が選考後半に偏るケース

「応募段階でネガティブ情報を出すと応募が減るから、選考が進んでから伝えよう」という判断は、対策の効果を弱めます。選考が進んでから情報を出しても、候補者はすでに「この会社で働く」というシナリオに気持ちが傾いています。ここでネガティブ情報を出しても「まあ、それくらいなら」と受け流されるか、「今さら言われても」という不信感につながります。

情報開示は応募段階から実装するのが原則です。応募数の減少は「合わない候補者が自ら離脱している」というポジティブな結果として捉える設計が有効です。

オンボーディングを制度導入だけで終わらせているケース

入社後のオンボーディングを、資料配布・座学研修だけで終わらせているケースも失敗パターンの一つです。制度としてオンボーディングを導入していても、上司との1on1の頻度が低い、メンターが名ばかりで実質機能していない、3ヶ月・6ヶ月面談で本音が引き出せないといった状態だと、ギャップの解消にはつながりません。

上司との1on1を週1回30分・メンター面談を月1回1時間・3ヶ月時点で人事同席の面談を組み込むといった、具体的な頻度と場の設計が必要です。

入社後ギャップ対策の効果を測る指標設計

対策を実施したら、効果を測定して改善サイクルを回します。測定なしに「対策をやっている」と言うだけでは、施策が空回りします。3層構造で指標を設計するのが実務的です。

選考中の指標:中盤〜後半の辞退率

対策を実装した直後に見るべき指標は、選考プロセスの中盤〜後半での辞退率です。情報開示が機能していれば、選考中盤で「自分には合わない」と判断した候補者が離脱するため、中盤の辞退率は上がります。ここで辞退率が上がることは、施策の失敗ではなく成功のシグナルです。

逆に、選考後半や内定後の辞退率が高いままだと、情報開示が不十分か、開示のタイミングが遅すぎる可能性があります。

入社後の定量指標:3ヶ月・6ヶ月・1年定着率

対策の本命の指標は、入社後の定着率です。3ヶ月、6ヶ月、1年の3時点で定着率を計測し、対策の導入前後で比較します。厚労省の統計では大卒3年以内の離職率が33.8%です。自社の1年定着率が業界平均を下回っている場合、対策導入前後で数値が改善しているかを追う価値があります。

採用人数が少ないとサンプルサイズが小さくなり、単年の数字だけでは判断できません。複数年の平均で比較する設計が現実的です。

定性データ:入社後3ヶ月時点の体感ギャップ調査

定量指標に加えて、入社後3ヶ月時点で「入社前に聞いていた話と実態のギャップ」を尋ねる定性調査を実施すると、改善サイクルが回しやすくなります。質問例としては「入社前に想像していたことと違ったことはありましたか」「事前にもっと知っておきたかった情報はありますか」「入社前に見た採用コンテンツで印象に残っているものは何ですか」などです。

回答を蓄積すると、次期採用で追加すべき情報や改善すべき伝達手段が見えてきます。

自社に合った対策の始め方

5つの実装手段を全部やる必要はありません。優先順位をつけて小さく始め、測定サイクルを回すのが現実的です。

現状のギャップ主因を特定する

出発点は、退職者インタビュー・在籍社員アンケート・入社3ヶ月面談で「入社後にどのギャップで辞められているか」を把握することです。

ギャップの主因が「仕事内容」なら、求人票への1日の流れ記載、体験入社、動画による業務可視化が効きます。ギャップの主因が「人間関係・組織文化」なら、カジュアル面談、社員インタビュー、動画による職場空気の伝達が効きます。「評価・待遇」なら、面談での率直な説明と、社員インタビューでの経験談共有が有効です。

主因が特定できると、5つの実装手段の中から効果と実装コストのバランスが良いものを1〜2個選べます。

小さく始めて測定サイクルを回す

対策は、一度の導入で完成する施策ではありません。応募数・辞退率・定着率を測定しながら、開示する情報と伝え方を改善していく継続施策です。

最初の一歩としては、求人票への1日の流れ記載か、選考初期のカジュアル面談の導入が始めやすい選択肢です。導入から3〜6ヶ月で応募母数と辞退率の変化を測り、6ヶ月〜1年で定着率の変化を検証します。改善の余地が見えたら、体験入社や動画コンテンツへと実装手段を広げていきます。

採用課題の全体像から自社の優先順位を組み立てる場合は、「採用がうまくいかない本当の原因」も合わせて参照してください。

まとめ

入社後ギャップは、日本の労働市場で経験率9割前後・企業側の早期離職発生率6割前後という広がりを持つ構造的な課題です。この記事のポイントを3つに整理します。

  1. 入社後ギャップは4種類に分類できる。仕事内容・人間関係・評価待遇・組織文化。自社で発生しているギャップがどの種類かを特定することが、対策設計の出発点になる
  2. 対策の実装手段は5つある。求人票への1日の流れ記載、カジュアル面談、職場体験、動画による現場開示、入社後オンボーディング。実装コストと効果が異なるため、自社のギャップ主因から1〜2個選ぶ
  3. 測定サイクルなしに対策は完成しない。選考中盤の辞退率、入社後3/6/12ヶ月定着率、入社後3ヶ月の体感ギャップ調査の3層で効果を測定し、改善サイクルを回す

まずは退職者インタビューや在籍社員アンケートで、自社のギャップ主因を特定することから始めてみてください。主因が見えれば、5つの実装手段の中で最初に着手すべきものが自然と決まります。

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