「DXを導入した。共同配送も始めた。それでも人が足りない」。物流業界の経営者から、こうした声を聞くことが増えました。ドライバー職の有効求人倍率は2.76倍。求職者1人を3社近くが奪い合う状態です(厚生労働省「一般職業紹介状況」2024年2月)。多くの記事が「効率化・自動化」を対策の中心に挙げていますが、効率化で減らせるのは「必要な人員」であり、「必要な人員を集める力」は別の課題です。この記事では、物流業界の人手不足がなぜ解消しないのかを構造的に整理し、効率化とは別のレバーである「採用力の強化」について、データと制作実績をもとに解説します。
目次
物流の人手不足は、個別企業の採用の工夫で乗り越えられる規模ではありません。公的データから、問題の深刻さを確認します。
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2024年2月)によると、自動車運転の職業の有効求人倍率は2.76倍です。全職業平均の1.26倍と比較すると2倍以上の水準です。
| 職種 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 全職業平均 | 1.26倍 |
| 自動車運転の職業 | 2.76倍 |
出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況」2024年2月
この数字は「求人を出せば誰か応募してくる」という前提が崩れていることを意味します。国土交通省の推計では、2030年度にはドライバー不足が21万人を超えるとされており、状況は今後さらに厳しくなる見通しです。
2024年4月、トラックドライバーに対する時間外労働の上限規制が適用されました。年間960時間が上限となり、長距離輸送の分割や中継輸送の導入が必要になっています。
NX総合研究所等の推計では、何も対策を講じなければ輸送力が14〜34%低下するとされています。つまり、「今の人数でも足りなかった」ところに、1人あたりの稼働時間が制限されることで、さらに多くの人手が必要になったのです。
この規制は長時間労働の是正という点で歓迎すべき動きです。しかし、人手の確保が追いつかなければ、配送の遅延や荷受け停止といった形で事業そのものに影響します。「効率化で乗り切る」という方針を多くの企業が採っていますが、果たしてそれだけで十分なのでしょうか。
物流業界は効率化に積極的です。DX・自動化・共同配送・モーダルシフト。こうした施策に取り組む企業は確実に増えています。しかし、効率化を進めても人手不足が解消しない構造的な理由があります。
自動倉庫やAGV(無人搬送車)の導入、配車の最適化、共同配送によるトラック積載率の向上。これらは「10人でやっていた仕事を7人でできるようにする」施策です。効率化は確かに必要な投資であり、多くの企業が成果を上げています。
しかし、効率化で人を3人減らしても、その7人が集まらなければ現場は回りません。効率化は「必要な人員数を減らす」施策であり、「人を集める力を高める」施策ではないのです。
物流業界の人手不足対策を取り上げた記事や報告書を読むと、対策の大半がDX・自動化・配送ネットワークの再編といった「効率化」に集中しています。もちろんこれらは重要な施策ですが、いずれも「必要な人員数を減らす」というアプローチです。
一方で、「必要な人員を実際に採用し、定着させる」という課題は、効率化とはまったく別のレバーで動かす必要があります。
| アプローチ | 施策例 | 解決する問題 |
|---|---|---|
| 効率化 (人を減らす) |
DX、自動化、共同配送、 モーダルシフト |
必要な人員数の削減 |
| 採用力強化 (人を集める) |
求人票の改善、現場の可視化、 入社後ギャップの解消 |
応募数・定着率の向上 |
効率化で必要な人員を7人に減らしても、応募が2人しか来なければ5人足りません。効率化と採用力強化は、どちらか一方ではなく両輪で回す必要があります。物流業界の人手不足がなかなか解消しないのは、この「採用力」のレバーが十分に動いていないからです。
効率化では解けない「採用側」の問題を掘り下げます。物流の採用が難しい原因は、待遇だけの問題ではありません。求職者の側から見たときに、3つの構造的な壁が立ちはだかっています。
インタツアーが23〜26卒の学生941名を対象に行った調査(2022年9月実施)では、宅配大手の企業名を「一社も回答できなかった」学生が47.0%に上りました。ヤマト運輸の認知度は36.7%、佐川急便は24.5%。業界最大手ですらこの水準です。

さらに、物流業界に対するマイナスイメージは「作業的」が39.7%で最多。「ワークライフバランスが取れない」が19.3%、「給料が低い」が18.8%と続きます(同調査)。

ここで重要なのは、このマイナスイメージが実態に基づいたものとは限らないという点です。企業名すら知らないのに「作業的」とイメージしている。つまり、個別の企業の実態を見た上での判断ではなく、「物流」というカテゴリに対する漠然としたイメージで候補から外されている状態です。
物流企業の求人票を開くと、仕事内容の欄に「ピッキング作業」「ルート配送」「フォークリフト作業」と書かれています。物流の現場経験者なら仕事のイメージが湧くかもしれません。しかし、未経験の求職者にとっては、これらの言葉から具体的な仕事の姿を描くことは困難です。
倉庫の中で実際に何をするのか。1日の仕事のリズムはどうなっているのか。どんな人たちと一緒に働くのか。こうした情報がなければ、求職者は「わからない仕事に応募する」リスクを取る理由がありません。
製造業の工場や建設の現場と同様に、物流の倉庫やトラックの中は外から見えません。小売店やオフィスワークなら日常生活の中で働く人の姿を目にする機会がありますが、倉庫内の作業動線やドライバーの1日を知る手段はほとんどないのが実態です。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」によると、運輸業・郵便業の3年以内離職率は高卒で32.7%です(2022年公表)。10人採用しても3年以内に3人以上が辞める計算です。
採用にかけた求人広告費、面接の工数、入社後の教育コスト。離職はこれらの投資をそのまま失うことを意味します。そして、残った社員の負担が増え、さらに離職が進む悪循環に陥ります。
離職の原因を見ると、エン・ジャパンが2023年に8,622名を対象に行った調査では、面接後の辞退理由1位は「求人情報と話が違った」(49%)でした。また、エン・ジャパンの別調査(2025年、291社対象)では、早期離職の要因1位が「仕事内容のミスマッチ」(57%)です。
応募前の情報不足 → 入社後のギャップ → 離職 → 採用コスト増 → 余裕がなくなりさらに情報発信が後回しになる。この悪循環を断ち切るには、「採用の入り口」の情報量を増やすことが起点になります。
前セクションで整理した3つの構造的要因に対して、具体的な対策を提示します。効率化に偏った対策とは別の、「採用力を強化する」アプローチです。
最もコストが低く、すぐに取り組めるアプローチです。
物流の求人票は「ピッキング作業」「ルート配送」といった業界用語で書かれがちです。これを未経験者にも伝わるレベルに具体化します。
費用はほとんどかかりません。これだけでも「何をする仕事か」の解像度は大幅に上がります。
求人票のテキストと写真だけでは伝えきれない情報があります。倉庫内で商品が動くスピード感、フォークリフトが稼働する音と振動、スタッフ同士の声の掛け合い。こうした情報は、映像でなければ届けられません。
採用動画の効果を示す調査データがあります。
映像は、現場見学の「リアルが伝わる」メリットと、Webの「いつでも誰でもアクセスできる」メリットを両立できる手段です。特に物流の現場は24時間稼働のシフト制であることも多く、求職者が実際に見学に来ることが難しい場合があります。映像なら、時間や場所の制約なく現場のリアルを届けられます。
ただし、映像を作ればそれだけで解決するわけではありません。採用サイト、求人媒体、SNSなど、求職者が実際に情報収集する場所に配置して初めて効果が出ます。
採用動画がもたらす効果をデータで検証した記事も参考にしてください。
採用ブランディングの実践ガイドでは、映像を含む情報発信の全体設計について解説しています。
採用力の強化は「応募を増やす」だけでは完結しません。入社後に「聞いていた話と違う」と感じさせないことが、定着率の向上と採用コストの削減に直結します。
具体的には、以下のような取り組みが有効です。
エン・ジャパンの調査で離職理由1位が「仕事内容のミスマッチ」(57%)であることを踏まえれば、入社前の情報量を増やすこと自体が、最も効果的な定着施策です。
ここまで、物流の人手不足の構造と採用力強化の方法を解説してきました。このセクションでは、私たちStokedBaseが実際に物流の現場に入って採用コンテンツを制作した経験から、「求人票では伝わらない情報」について具体的にお伝えします。
大阪を拠点に総合物流、国内輸送、ソリューション、物流改善、国際物流の5事業を展開する株式会社シンワ・アクティブ。創業から60年の歴史を持つ物流企業です。
StokedBaseはシンワ・アクティブの採用サイト制作と採用動画制作を担当しました。
採用サイトでは、元々コーポレートサイト内に限定的だった採用コンテンツを刷新しました。「会社のこと」「職種のこと」「人のこと」の3軸で情報を構成し、動画資産と新たに撮影した写真を随所に配置することで、テキストだけでは伝わりきらない「会社の温かさ」や「社員の優しさ」を視覚的に表現しています。さらに「座談会」コンテンツを新設し、社員同士の自然な会話を吹き出しデザインで見せることで、社内の人間関係の距離感が伝わる設計にしました。
採用動画では、物流倉庫を舞台に社員一人ひとりが「自分らしいポーズ」を取った後に一言メッセージを語る構成を採用しました。倉庫作業スタッフ、事務職、管理職など複数の職種が登場し、多様な働き方と「自分らしく挑戦できる職場」を表現しています。この動画は採用活動の中心コンテンツとして活用されています。
物流の現場に入って改めて感じたのは、「求人票に書かれていない情報」こそが、求職者にとって最も知りたい情報だということです。
たとえば、こうした情報です。
シンワ・アクティブのブランド動画「ココロ踊らす、次の物流へ」では、荷物が顧客に届いた瞬間の表情を映し出すことで、「単にモノを運ぶだけではない」物流の価値を可視化しています。
「作業的」というイメージを変えるには、言葉で「そうではない」と否定するだけでは足りません。実際の現場を見せることで、求職者自身が判断できる情報を届けることが重要です。
物流業界の人手不足が解消しない理由は、シンプルです。
効率化への投資は引き続き重要です。しかし、それと同時に「自社の現場を、求職者に届ける」ための投資も始める必要があります。求人票の改善、映像コンテンツの制作、採用サイトの充実。自社の状況に合ったものから始めてください。
StokedBaseは映像・YouTube・Webを横断し、企画の壁打ちから配信設計、運用改善まで一気通貫で支援しています。物流業界の採用課題について、映像コンテンツで解決できるか気軽にご相談ください。