動画制作を外注したことがある企業担当者の約79%が「失敗した」と感じている、という調査結果があります(EXIDEA調べ 2022年)。動画制作の失敗は、決して珍しいことではありません。
問題は「なぜ失敗するのか」が整理されないまま、「次はうまくいくだろう」と発注を繰り返してしまうことです。この記事では、実際に企業向けの映像制作を手がけるStokedBaseが、発注者側と制作会社側の両方の視点から、失敗が起きる構造的な原因と、それを防ぐための具体的なチェックリストを解説します。
目次
動画制作の失敗について対策を考える前に、まず「失敗」の中身を整理します。ひと口に「失敗」と言っても、その内容はいくつかのパターンに分かれます。
動画制作の外注に関する調査データを2つ紹介します。
EXIDEA社が2022年に実施した調査(対象: 過去3年以内に動画制作を外注したBtoB企業の担当者105名)では、79.0%が「失敗経験がある」と回答しています。失敗理由の上位は「意図していたものとズレがあった」56.6%、「クリエイティブの質が低かった」51.8%、「自社のビジネス理解が乏しかった」43.4%です(EXIDEA「動画制作の外注に関する実態調査」2022年4月)。
また、一括.jp(株式会社cleargranz)が2025年に実施した調査(対象: 動画制作を外注した経験のある企業担当者131名)では、トラブルの上位に「制作会社とのコミュニケーション不足」28.2%、「修正回数や対応範囲が少なかった」28.2%、「制作意図や要望が反映されなかった」27.5%が挙がっています(一括.jp「動画制作の外注トラブル調査」2025年7月)。
これらの調査データを踏まえると、動画制作の失敗は大きく3つに分類できます。
| 失敗のタイプ | 典型的な症状 | 根本にある問題 |
|---|---|---|
| 完成した動画が意図と違う | 「イメージと違う」「伝えたいことが伝わっていない」 | 発注者と制作会社の間で、目的やイメージの擦り合わせが不十分 |
| 費用・納期のトラブル | 「追加費用が想定外」「納期が大幅に遅れた」 | 見積もりの前提条件や修正ルールが曖昧なまま進行 |
| 動画はできたが成果が出ない | 「再生されない」「問い合わせにつながらない」 | 動画の活用先・ターゲットが未設計のまま制作 |
失敗のタイプによって原因も対策も異なります。以下では、それぞれの原因を「発注者側」「制作会社側」「費用・納期」の3つの切り口で掘り下げます。
まず、発注者側に原因があるケースです。EXIDEA調査で失敗理由の1位が「意図していたものとズレがあった」であることが示すように、発注時点での準備不足が失敗の起点になることが多くあります。
「採用に使いたい」「会社紹介用に」は動画の用途であって、目的ではありません。目的とは「この動画で何を変えたいか」です。たとえば「新卒の応募数を増やしたい」「面接辞退率を下げたい」「取引先に事業内容を説明する時間を短縮したい」が目的です。
目的が曖昧なまま発注すると、制作会社は「何をもって成功か」を定義できません。結果として「きれいだけど何に使えばいいかわからない動画」が仕上がります。たとえば採用目的の動画であれば、採用動画の効果を事例で確認することで、目的設定の参考になります。
担当者レベルで「こういう動画を作りたい」と進めたものの、完成後に決裁者が見て「思っていたものと違う」と差し戻しになるケースがあります。
EXIDEA調査で「意図していたものとズレがあった」が56.6%に達する背景には、「誰の意図とズレたのか」という問題があります。担当者と決裁者で求めるものが異なるのに、担当者だけの判断で発注を進めてしまう構造です。
制作に入る前に、社内で「この動画で何を伝えるか」「どこで使うか」「最終的に誰がOKを出すか」を合意しておくことが必要です。
「おまかせで」「いい感じにしてください」は、制作会社にとって最もリスクが高い依頼です。イメージの擦り合わせ材料がないまま制作に入ると、完成後に「思っていたのと違う」が起きます。
「こういう雰囲気の動画にしたい」という参考動画を2〜3本ピックアップしておくだけで、制作会社との認識のズレは大幅に減ります。YouTubeで同業他社の動画を見てみる、制作会社の実績ページから気に入った動画を選ぶ、といった方法で十分です。
ここからは、制作会社側に原因があるケースです。競合の記事では「発注者が気をつけるべきこと」にフォーカスしたものが多いですが、実際には制作会社側の問題で失敗が起きることも少なくありません。制作を請ける側の立場から、発注者が気づきにくい問題を率直にお伝えします。
制作会社のヒアリングが「どんな動画を作りたいですか?」「尺はどのくらいですか?」という制作仕様の確認だけで終わっている場合、完成した動画がビジネスの課題解決につながらないリスクがあります。
一括.jp調査でトラブル1位が「コミュニケーション不足」28.2%であることの背景には、このヒアリングの深さの問題があります。本来は「なぜ動画を作るのか」「ターゲットは誰か」「動画をどこで使うのか」「成功の基準は何か」といったビジネス課題の理解まで踏み込む必要があります。
StokedBaseでは、制作仕様の前にまず「この動画で解決したい課題」をヒアリングすることを重視しています。動画は手段であり、目的ではないからです。
制作会社の中には、営業担当が案件を受注し、制作は社内の別チームまたは外部のクリエイターに委託する体制を取っているところがあります。この場合、発注者が営業に伝えたニュアンスや背景情報が、制作者に正確に伝わらないことがあります。
EXIDEA調査の「自社のビジネス理解が乏しかった」43.4%には、制作者がクライアント企業のビジネスを直接聞いていないケースが含まれていると考えられます。
打ち合わせに来る人と、実際に撮影・編集を行う人が同じかどうかは、発注前に確認すべきポイントです。動画制作会社の選び方について詳しくはこちらで解説しています。
一括.jp調査では、修正に関するトラブルが複数の項目で上位に入っています。「修正回数や対応範囲が少なかった」28.2%、「修正依頼が反映されなかった」31.3%、「修正時に追加料金が発生した」29.0%です(一括.jp 2025年7月)。
この問題の根本は、修正ルールが契約時に明確に決まっていないことです。「修正2回まで無料」と書いてあっても、何をもって「1回」とカウントするかは制作会社によって異なります。テロップの文言修正1か所で1回とする会社もあれば、初稿全体へのフィードバックをまとめて1回とする会社もあります。
費用と納期のトラブルは、発注者にとって最もストレスの大きい問題です。ここでは、トラブルが「なぜ」起きるのかの構造を解説します。
一括.jp調査で費用に関する不満の1位は「追加費用発生時の説明不足」31.3%、2位は「費用内訳の不透明さ」29.8%です(一括.jp 2025年7月)。
追加費用が発生しやすいのは、以下のようなケースです。
費用トラブルを防ぐには、見積もり段階で「この金額に何が含まれていて、何が含まれていないか」を確認することが基本です。動画制作の費用相場と見積もりの見方はこちらで詳しく解説しています。
納期が遅れる原因は、制作会社の作業遅延だけではありません。実際には「クライアント側の確認・フィードバックに時間がかかった」ことが原因で全体スケジュールが後ろ倒しになるケースが多くあります。
一括.jp調査でも「スケジュール共有不足」31.3%、「制作期間の大幅延長」27.5%がトラブルとして挙がっています(一括.jp 2025年7月)。
この問題を防ぐには、制作スケジュールの中に「クライアント確認」のマイルストーンを設定しておくことが有効です。「企画確認: ○月○日まで」「初稿フィードバック: ○月○日まで」といった形で、発注者側にも期限を設けることで、確認待ちによる遅延を防げます。
ここまでの内容を踏まえて、動画制作を外注する前に確認しておくべき項目をまとめます。「目的を明確にしましょう」のような抽象的なアドバイスではなく、具体的に何を確認すればいいかをリスト化しました。
動画制作の失敗は、発注者と制作会社のどちらか一方だけの問題ではありません。
失敗の構造を理解し、発注前のチェックリストで確認しておけば、大半の問題は防げます。
StokedBaseでは、制作の目的整理から一緒にお手伝いしています。動画制作で「こんなはずじゃなかった」を避けたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
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