物流業界のドライバー職の有効求人倍率は2.78倍。全産業平均の2倍以上です(ロジクエスト 2025年7月)。倉庫業も1.92倍と高水準が続いており、物流企業にとって人材確保は経営課題そのものです。
この記事では、関西に本社を置く総合物流企業(株式会社シンワ・アクティブ)がYouTubeで採用チャンネルを2年間運用し、99本の動画を公開した実績データを紹介します。カテゴリ別の再生数比較では、密着動画の平均再生数が座談会動画の9倍という差が出ました。何が伸びて何が伸びなかったのか、チャンネル運用で見えた課題も含めてお伝えします。
目次
物流業界の採用が難しい最大の理由は、求職者が「現場で何をしているのか想像できない」ことにあります。このセクションでは業界データをもとに、物流特有の採用課題の構造を整理します。
インタツアーが実施した業界別イメージ調査(23-26卒対象)によると、学生の47%が物流企業の名前を一社も挙げられなかったと報告されています(PR TIMES掲載)。製造業やIT業界と比べて、物流の仕事は日常的に目にする機会が少なく、「知らない」以前に「存在を認識していない」状態です。
同調査では、物流業界の選考を検討する学生は25.2%にとどまっています。知名度がないことで、就職先の選択肢に入る前に外されている構造です。採用がうまくいかない本当の原因と対策でも解説していますが、採用難の根本は「企業の実態が求職者に伝わっていない」ことにあります。
物流業界に対するマイナスイメージとして最も多いのが「作業的」で39.7%(インタツアー調査)。「体力的にきつそう」「単調な繰り返しの仕事」というイメージが、実態と関係なく先行しています。
しかし実際の物流現場は、フォークリフトによるピッキング、在庫管理システムの運用、出荷スケジュールの調整など、判断力が求められる業務の連続です。テキストや求人票でこの実態を伝えるには限界があり、映像によって「仕事の動き」を見せることが、イメージを更新する有効な手段になります。物流の人手不足が解消しない理由では、この課題の構造をさらに詳しく解説しています。
ここからは、物流業界の総合物流企業(シンワ・アクティブ)がYouTubeで採用チャンネルを立ち上げた具体的な事例を紹介します。従業員106名、グループ全体で633名規模の企業が、2024年1月にチャンネルを開設した経緯です。
シンワ・アクティブが採用チャンネルを始めた背景には、従来の求人媒体だけではリーチできない層の存在がありました。求人サイトに掲載しても、そもそも物流企業を検索しない学生には情報が届きません。
就活生の50%がYouTubeで採用動画を視聴しているというデータもあり(業界調査データ)、YouTubeは求人媒体では届かない層との接点になり得ます。チャンネルの概要欄には「物流業界を志望する就活生」「志望しようか悩んでいる就活生」と明記されており、まだ物流業界を選択肢に入れていない層にも届くことを意図した設計です。
採用動画は「1本作って採用サイトに載せる」使い方が一般的です。シンワ・アクティブが単発の動画制作ではなくYouTubeチャンネルの継続運用を選んだのは、採用コンテンツを「資産」として蓄積する狙いがありました。
単発の動画は公開後に再生数が落ち着くと、新しい求職者への接点が限られます。一方、チャンネルに動画が蓄積されると、YouTubeの検索・推薦アルゴリズムを通じて継続的に新しい視聴者にリーチできます。StokedBase(ストークベース)がYouTube運用を支援するこのチャンネルは、2年間で99本の動画を公開し、総再生29.5万回を達成しています(チャンネル分析レポート 2026年3月時点)。採用動画のトレンドと成功事例でも、チャンネル運用型の活用が増えている傾向を紹介しています。
このセクションでは、99本の動画(ロング84本+Shorts15本)のカテゴリ別パフォーマンスデータを公開します。物流の採用動画で「どんなコンテンツを作るべきか」の判断材料として活用してください。
ロング動画84本をカテゴリ別に分類すると、再生数に大きな差が出ました。
| カテゴリ | 本数 | 平均再生数 | 最高再生数 |
|---|---|---|---|
| 1日密着・密着 | 29本 | 7,662回 | 65,754回 |
| 施設紹介・ツアー | 5本 | 2,568回 | 5,163回 |
| 会社紹介 | 2本 | 1,752回 | 2,443回 |
| 業界研究・解説 | 8本 | 1,291回 | 2,521回 |
| チャレンジ・企画 | 6本 | 1,020回 | 4,477回 |
| 座談会・対談・トーク | 17本 | 821回 | 2,452回 |
出典: チャンネル分析レポート(2026年3月 YouTube Data API取得)
密着動画の平均再生数7,662回は、座談会の821回の約9倍です。この差は偶然ではなく、29本と17本という十分な本数での比較結果です。チャンネル全体の最高再生数65,754回も密着動画(新入社員の1日密着)から生まれています。採用動画の効果を事例で検証では、業種横断で採用動画の効果データをまとめています。
前セクションのデータが示す通り、密着動画は物流業界の採用コンテンツとして突出した成果を出しています。ここでは「なぜ密着形式が物流に合うのか」を構造的に整理します。
求職者調査のデータによると、「1日の流れ」は企業側からの情報供給が8.7ポイント不足しています(経営戦略§1-3)。求職者が知りたい情報のうち、最も届いていない情報の一つです。
特に物流の現場は、テキストや写真では仕事の全体像が伝わりにくい分野です。フォークリフトで商品を運搬する、検品ラインで入荷物を確認する、出荷スケジュールに合わせてピッキングするといった作業は、一連の流れを映像で見なければ具体的にイメージできません。密着動画は「1日の流れ」をそのまま映像化できる唯一のフォーマットです。
物流業界に対する「作業的」というマイナスイメージ(39.7%、インタツアー調査)は、テキストで「うちの職場は働きやすいです」と書いても解消しません。
密着動画では、社員が同僚と声を掛け合いながら作業する場面や、休憩中の自然な会話が映ります。実際にこのチャンネルで最も再生されている動画(65,754回)は、新入社員が先輩に質問しながら業務を覚えていく1日を追った密着動画です。テキストでは伝えられない「職場の空気感」が映像に残ることで、固定イメージが更新される効果が生まれています。
密着撮影では、インタビュー動画のように事前に用意した回答を話すのではなく、業務中の自然なやりとりがそのまま映像に残ります。
このチャンネルの高再生動画に共通するのは、出演者の「素の反応」です。新入社員が初めてフォークリフトを操作する緊張感、ベテランが手際よく作業をこなす日常、チームで声を掛け合う場面。こうした素の反応は、求人票の「チームワークが良い」という一文よりも、はるかに説得力があります。密着動画の作り方と制作のポイントでは、この撮影手法の詳細を解説しています。
ここまでのデータと課題を踏まえ、物流・運送業の企業が採用動画で効果を出すために押さえるべきポイントを整理します。
99本のデータが示す通り、物流の採用動画では密着形式が他のどのフォーマットよりも高い再生数を記録しています。座談会やトーク形式は制作が比較的容易ですが、物流の現場には動きのある作業が多く、密着形式の方が映像としての魅力を引き出しやすい構造です。
採用動画を初めて作る場合でも、「社員の1日密着」から始めることをお勧めします。若手社員が朝の出勤から退勤まで、どんな仕事をしているかを追う構成です。事例のチャンネルでも、この形式の動画が最も高い再生数を記録しています。
1本の採用動画を作って採用サイトに掲載するだけでも効果はあります。製造業の採用動画事例では、4本の動画で2年間に合計25,000回以上再生された事例を紹介しています。
ただし、チャンネル運用による99本の動画蓄積は、単発制作とは異なるメリットを生みます。動画が増えるほどYouTubeの検索・推薦で表示される機会が増え、チャンネル全体が採用資産として機能します。まず1-2本の密着動画を制作し、効果を確認した上でチャンネル運用に移行する段階的なアプローチが現実的です。IT企業の採用動画事例では、単発制作から始めた事例を紹介しています。
採用動画の効果を「感覚」ではなく「データ」で判断するために、計測の仕組みを最初から設計しておくことが重要です。
具体的には、YouTube概要欄やピン留めコメントに掲載するリンクにUTMパラメータを設定すること、応募フォームに「どこで当社を知りましたか」の項目を入れること。この2つだけで、YouTube→応募の導線が可視化されます。
事例のチャンネルでも、UTMパラメータが未設定だったため「YouTubeからどれだけ応募があったか」を正確に把握できていない状態があります。効果が見えなければ投資判断が感覚的になり、継続の根拠が曖昧になります。最初の動画を公開する前に、計測導線を整えることを強く推奨します。
採用動画の費用相場と予算別の始め方では、予算に合わせた始め方を解説しています。
この記事のポイントを3つに整理します。
StokedBase(ストークベース)は、物流・製造業をはじめとする現場産業の採用課題を映像で解決してきました。密着撮影を通じて、求職者が知りたい「現場のリアル」を映像で届け、採用活動を前に進めます。自社の採用課題を映像で解決できるか知りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
採用がうまくいかない本当の原因では、業種を横断した採用課題の構造を解説しています。