「求人を出しても応募が来ない」「来ても辞退される」。この状況が続いている会社に共通するのは、求職者に届いている情報が「求人票の条件」だけになっていることです。採用広報は、求人票だけでは伝わらない自社の魅力を、求職者に直接届ける取り組みです。この記事では、採用広報の意味から具体的な手法、始め方までを、現場で人を必要としている企業の視点で解説します。
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採用広報とは、自社の魅力や働く環境の情報を、求人媒体に頼らず自社から発信する活動です。目的は、求職者に「この会社で働いてみたい」と感じてもらうこと。求人広告が「条件を並べて応募を待つ」のに対し、採用広報は「自社から情報を届けて興味を持ってもらう」攻めの採用活動です。
採用広報と似た言葉に「採用ブランディング」があります。採用ブランディングは「自社がどんな会社として認知されたいか」を設計する戦略的な取り組みです。一方、採用広報はその設計をもとに、実際に情報を届ける実行面を指します。
「何を伝えるか」を決めるのが採用ブランディング、「どう届けるか」を実行するのが採用広報。両者は別々のものではなく、設計と実行の関係にあります。採用ブランディングの考え方については「採用ブランディングとは?知名度がなくても「この会社で働きたい」を作る実践ガイド」で詳しく解説しています。
従来の採用は、求人媒体に情報を掲載し、応募が来るのを待つ形でした。しかし今は、求職者が応募前に企業の情報を自ら調べる時代です。企業のWebサイト、SNS、口コミサイトなど、複数の情報源を見た上で応募するかどうかを判断しています。
つまり、求人媒体に載っている情報だけでは判断材料が足りないと感じる求職者が増えています。自社から情報を出さなければ、比較検討の段階で候補から外れてしまうのです。
このセクションでは、なぜ「求人を出せば人が来る」が通用しなくなったのかを整理します。
求職者の行動は「求人媒体を見て応募する」から「企業について事前に調べてから応募する」へ変わっています。マイナビの調査によると、転職者の約9割が応募前に企業の情報収集を行っています。
出典: マイナビ「転職動向調査」2024年
調べる先は求人票だけではありません。企業の公式サイト、社員の発信するSNS、口コミサイト、YouTube。あらゆるチャネルで「この会社はどんなところか」を確認しています。このとき、企業側が発信している情報が求人票の条件だけだと、求職者には「よくわからない会社」と映ります。
求人票に書ける情報は限られています。給与、勤務時間、福利厚生、仕事内容の概要。これだけで「この会社で働きたい」と思ってもらうのは難しい。
特に製造業、建設業、ホテルなどの現場産業では、仕事の魅力は条件欄には収まりません。職場の空気感、チームの雰囲気、仕事のやりがい。こうした「体験しないとわからない情報」が、実は応募の決め手になっています。人材確保が難しくなっている構造的な理由は別の記事で詳しく解説していますが、根本にあるのは「求職者に届く情報の量と質が足りていない」ことです。
手法を選ぶ前に、まず「何を発信するか」を決めることが重要です。採用広報でありがちな失敗は、「とりあえずSNSを始めよう」と手法から入ってしまうこと。発信する中身が定まっていなければ、どの手法を使っても効果は出ません。
moovyの調査(2024年、n=327)によると、求職者が動画で見たい内容の上位は「1日の流れ」「現場の雰囲気」「入社理由・やりがい」です。共通しているのは、すべて実際に働く姿が想像できる情報だという点です。
求人票に書かれた「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」といった言葉では、この情報は伝わりません。求職者が知りたいのは「どんな人が、どんな環境で、どんな仕事をしているか」の具体的な姿です。
発信すべき情報を整理すると、以下の3つに集約されます。
この3つの中で、特に文字だけで伝えるのが難しいのが「職場の空気感」です。工場のラインで黙々と作業するイメージと、実際にチームで声を掛け合いながら動いている現場の雰囲気は、文字ではどうしても伝えきれません。
ここに、採用広報の手法選びのヒントがあります。伝えたい内容によって、最適な手法は変わるのです。
採用広報の主な手法を整理します。すべてをやる必要はありません。自社のリソースと伝えたい内容に合った手法を選ぶことが大切です。
自社の採用ページやnote、ブログで社員インタビューや職場紹介の記事を発信する方法です。
文章は「考え方」や「想い」を伝えるのに適しています。代表メッセージ、社員が入社を決めた理由、会社の方針やビジョンなど、じっくり読んでもらいたい内容に向いています。コストが低く、自社だけで始められるのも強みです。
一方で、現場の雰囲気やチームの空気感を文字で伝えるには限界があります。更新を続けるための体制づくりも必要です。
日常的な発信で会社の存在を知ってもらう方法です。拡散力があり、まだ自社を知らない求職者にリーチできる可能性があります。
ただし、効果が出るまでに時間がかかります。コンテンツの企画・撮影・投稿を継続する運用体制が必要で、担当者の負荷は高くなります。また、SNSの特性上、投稿は流れていくため、蓄積型の情報発信には向きません。
職場の雰囲気、社員の表情、仕事の現場を映像で伝える方法です。文字やSNSでは伝えきれない「空気感」を届けられるのが最大の強みです。
採用動画の制作については「最新の採用動画トレンド」や「会社紹介動画の構成と制作ポイント」で詳しく解説しています。
制作にはコストがかかりますが、一度作れば採用サイト・YouTube・SNS・説明会など複数の場面で繰り返し使えます。費用対効果は「1回きり」ではなく「使い続ける期間」で考える必要があります。
ここでは、映像を使った採用広報が実際にどのような効果をもたらしているかを、データと事例をもとに解説します。
採用動画に関する調査データは、映像の効果を裏付けています。
これらのデータが示しているのは、求職者は「文字情報だけでは判断できない」と感じているということです。特に現場産業では、仕事内容や職場環境を言葉だけで伝えることの限界は顕著です。採用動画の効果を事例付きで解説した記事もあわせてご覧ください。
情報の種類によって、最適な手法は異なります。
たとえば株式会社シンワ・アクティブのブランド動画では、倉庫の中で働くスタッフの表情やチームの連携がそのまま映し出されています。求人票に「チームワークを大切にする職場です」と書くよりも、実際に協力しながら作業している映像の方が説得力があります。
また、榛木金属工業株式会社では、YouTubeを活用した採用広報に取り組んでいます。製造現場の様子を映像で発信することで、文字情報では伝わりにくい職場環境を求職者に届けています。
採用広報が上手い企業に共通しているのは、「自社のどの情報が求職者に届いていないか」を把握し、その情報に最適な手法を選んでいることです。映像はあくまで手段の一つですが、現場の空気感を伝える必要がある会社にとっては、効果的な選択肢です。
「やった方がいいのはわかるけど、何から始めればいいかわからない」。そんな声に応えて、採用広報を始めるための3つのステップを整理します。
最初にやるべきは、自社の魅力を棚卸しすることです。「うちの会社にはアピールできることがない」と感じる方もいるかもしれませんが、社員が辞めずに働き続けている理由があるなら、それが魅力です。
具体的には、以下の問いに答えてみてください。
社長や人事の視点だけでなく、現場で働いている社員に聞くことが重要です。採用広報で伝えるべきは、経営者の想いだけではなく、現場のリアルです。
すべてを同時に始める必要はありません。まずは1つの手法に絞って始めるのが現実的です。
選び方の基準は「自社のリソースで継続できるか」です。
最初から完璧なコンテンツを目指す必要はありません。大切なのは、求職者に「この会社の情報がある」と見つけてもらえる状態を作ることです。
採用広報は一度やって終わりではなく、継続してこそ効果が出ます。ただし「毎日更新しなければ」と気負う必要はありません。
無理なく続けるためのポイントは3つです。
社内に人手が足りない場合は、映像制作や採用サイト制作を外部に依頼するのも選択肢です。撮影・編集のプロに任せることで、限られたリソースでも質の高い採用広報を始められます。
採用広報は、求人票では届けきれない自社の魅力を、求職者に直接届ける取り組みです。
StokedBaseは、現場産業の企業が抱える「伝わらない」課題に対して、映像制作・採用サイト制作・YouTube運用で採用広報を支援しています。「自社の魅力をどう伝えたらいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。